2017-04-20

最終審査終了。

 昨日、約3ヶ月に渡って行われてきたボーイング767副操縦士の訓練のすべてが終了しました。 いや〜、長かった! 毎回訓練を受けると長く感じますが、今回の訓練は今までで一番長く、そして大変なように感じました。 会社も変わり、機種も変わり、はたまた飛ぶルートも変わり、なにもかもが新しいことばかりで精神的にも結構疲れました。 でも、訓練が終わった今は頑張ってよかったな〜と思っています。

 シミュレーター訓練が終了した段階でボーイング767の型式証明は取得できましたが、訓練はそこでは終わりません。 今度は実際のラインフライトを通じて行われるLine-indoc訓練が待っていました。 今までシミュレーターでは万が一のトラブルに備えるための訓練が主でしたが、line-indocでは実際にお客さんを乗せて運航する通常のフライトでのオペレーションを学びます。 

 最初のフライトはトロントからバンクーバーまでの往復でした。 実際に200名近いお客さんを乗せて飛ぶのはシミュレーターとは少し違いました。 フライト中にPilot Monitoring(操縦していない方)としての業務なども多く学びました。 始めての着陸はかなり緊張しましたが、思ったよりもうまくいきました。 多くの機長いわく、「ボーイング767は巨大なセスナ172」なんだそうです。 たしかに、手動操縦でも操縦しやすく、安定しています。 コクピットは今まで飛ばしてきたどの飛行機よりも高いところにあるので、アプローチ中の外の見え方がかなり違います。 椅子の高さが高すぎるんじゃない?って思うくらいに座高を調整します。 

 2回目のペアリングでは成田空港にいきました。 アメリカ・カナダ以外の外国へのフライトは初めてで、太平洋を横断してのフライトでした。 このフライトは10時間ほどのフライトだったので、機長、僕、そしてもう一人の副操縦士の計3名体制でのフライトでした。 途中で3時間ほどの休憩を取ることができたので疲れは思ったほど酷くはありませんでした。 ただ、緊張のせいもあり、前日はあまり眠れなかったし、飛行中の休憩でもほとんど眠れませんでした。 ボーイング767にはバンクベッドがないので、ビジネスクラスの一番後ろの席をカーテンで囲い、外のお客さんから隔離された空間で休憩を取ります。 シートはフルフラットになるのでかなり快適です。 成田空港へのアプローチは日本人管制官の英語に戸惑うことが少々ありましたが、比較的スムーズに行ったと思います。 僕が長年夢見てきた、「パイロットとして日本へ飛んで帰る」ことが実現した瞬間でした。 
(写真上:ロシア、北海道東部を通過して成田へアプローチ)
 
 (写真上:ANAが成田では業務を担当してくれています)

 (写真上:成田山)

 東京でのレイオーバーは丸一日。 到着当日はクルーと共に成田市内のバーやラーメン屋などを周り、楽しい時間を過ごしました。 成田にはエアラインクルー御用達のお店が多くあるようです。 そこは僕の知らない日本でした。 翌日はイオンモールに行き、ちょっとだけ買い物をし、成田山へも足を伸ばしました。 東京にいる友人達にも会いたかったのですが、なにせ短いレイオーバーだったので今回は断念しました。 

 (写真上:成田山では桜が綺麗でした)

  成田からの出発では僕が操縦を担当しました。 燃料をかなり積んでいるので、離陸の際はとても重く、滑走距離もかなり長いです。 これにも慣れが必要です。 

 こうして2回目のペアリングが終了。 1日だけ休みがあり、その後、今度はロンドンへのフライトとなりました。 そして、これが最終審査のペアリングでした。

 今度は大西洋を横断してイギリスまでいきました。 大西洋横断はちょっと特別で、いろいろ知って置かなければいけないルールがあります。 訓練中にちょっとだけ習いましたが、実際に体験するのはこれが初めて。 機長は監査担当ではありますが、それでもこれが僕の初めての大西洋横断ということもあり、いろいろ細かく指導してくれました。 

 ロンドンへのアプローチではほぼ毎回どこかでホールドさせられます。 僕達は約10分間、VORの上空を旋回させられました。 イギリス英語の訛り、独特の言い回し、そして喋る速度が極端に速いので、航空無線を理解するのが大変でした。 

 ロンドンの滞在ホテルは空港から1時間弱のところで、ビートルズで有名なアビーロードの近くです。 チェックイン後は3時間ほど昼寝をしました。 本当はもっと眠れましたが、そうすると時差ボケになってしまうので無理をして起きました。 そしてアビーロードやホテル周辺を散策。 その後は勉強をしました。 夕方は機長や他のクルーたちとバーやインド料理屋にいきリラックスした時間を過ごしました。 

 (写真上:アビーロード)

翌朝、ロンドンにあるハイドパークというところまでランニングしました。 この時とても不思議な感覚に襲われました。 ほんの数日前には成田市内を散策していたのに、今はロンドンでジョギングしている。 一体自分はどこに属しているんだろう?という不思議な感覚です。 国際線パイロットの生活はとても不思議です。

 (写真上:緑豊かなハイドパーク)

ロンドンからカナダに戻るフライトが最終審査となり、巡航中にいろいろ緊急時の対策などについて質問されました。 いくつか答えるのに困る質問もありましたが、概ね問題なく回答でき、機長も納得してくれたようで、カナダに着陸するだいぶ前に「Welcome to Boeing 767!」と言って握手をしてくれました。 これで審査が終了しました。 

 オタワ空港に到着し、今度はそこからトロントまでのデッドヘッド。 そして、カルガリーまでのフライトと、24時間以上起きっぱなしでした。 しかも帰りのフライトでは隣に小さなお子さんを連れたお母さんが座っていて、このお子さんが泣きまくりでかなり大変でした(笑)。 なにはともあれ、午前2時前にカルガリーの自宅に久しぶりに戻ってきました。

 こうして長かった訓練が一応終了しました。 英語では「drinking from the fire hose」とか、「fire in the helmet」という表現で訓練の大変さを表します。 覚えることが多すぎて頭がパニック状態になることがなんどもありましたし、今まで出来ていたことが突然できなくなったり、明らかに習得度合いが落ち始めたときもありました。 それでもなんとか乗り切ることができ、晴れてボーイング767の副操縦士としてチェックアウトできたことはとてもうれしく思っています。 

 次回はボーイング767について少し書こうかと思います。


(つづく)

2017-04-02

訓練終了!

 昨日、最終審査があり、無事に合格しました。 これで僕のライセンスには「ボーイング767型式証明」が追加され、正式に767を飛ばす資格を取得したことになります。 
 最終審査は通常のフライトを模したもので、いわゆるLOFT(Line-Oriented Flight Training) 形式の試験です。 シミュレーターに入るところからあたかも実機で実際のラインフライトをしているかのように物事が進んでいきます。 試験官は給油係、客室乗務員、グランドハンドラー、航空管制官、などなどの役割をしてくれます。 我々(僕とトレーニングパートナー)は機長・副操縦士という想定でフライトの準備をします。 実際のフライトを経験していない僕達にとってはこれがなかなか大変だったりもします。 

 最初のフライトでは僕が操縦士でPilot-Flying、つまり操縦担当でした。 離陸後にエアコンディショニングシステムが故障し、そのため代替空港へのダイバートが必要になりました。 緊急時のチェックリストに従って問題を解決、代替空港へのアプローチの準備、アプローチ、そして着陸。 着陸後はゲートまでタクシー。 そこで前半戦終了。

 後半は僕がPilot-Monitoring、つまり操縦以外の業務担当で、機長役でした。 ボーイング767は大きな飛行機なので、地上移動の時のタクシーが大型トラックの右左折のようにかなり大回りで曲がります。 それが実は結構楽しいです(笑)。  パートナーの操縦んで離陸後、片方のエンジンの油圧系統に異常が発生。 チェックリストに基いて問題のあるエンジンを停止、シングルエンジンで出発空港へ引き返します。 機長役なので乗客への説明などもやります。 無事に着陸し、ゲートへタクシーしてシャットダウン。 そこで試験は終了となりました。

 試験官からはいろいろと細かな点を指摘されました。 緊張もあって、いくつかのミスをしましたが、安全運行に支障が出ることはありませんでした。 よって、無事合格! 

 今回の訓練でエアラインでの訓練は3回目となります。 初回はダッシュ8、次がCRJ、そして今回のボーイング767です。 毎回訓練中は大変だと思うものですが、今回はいろいろな理由で結構疲れました。 

 会社が代わり、SOP(Standard Operating Procedures)が変わると慣れるのに少し時間がかかります。 今回の会社ではいろいろと丸暗記しなければいけないこともあり、それに慣れるのに少し時間がかかりました。 また、会社によってマニュアルがかなり違うことにも気が付きました。 前の会社のマニュアル類はとても良く出来ていて、分かりやすく、理解しやすかったように思います。 今回の会社のマニュアルは残念ながらそうではなく、知らないといけないことが何種類かのマニュアルに分散されて書かれていたり、書かれ方が明確でない場合もありました。 よって、理解・暗記をするのに余計に時間がかかりました。 

 767は海外へのフライトも多く、そのため太平洋・大西洋を渡る手順も知らないといけません。 そのためのブリーフィングと訓練日が特別に設けられました。 これも今までの飛び方とは違い、いろいろ学ぶことが多いです。 でも、面白いことばかりでした。 今まで知らなかったことが多く、新鮮でした。

 今回のトレーニングパートナーが僕と同じ外国人で、残念ながら英語力があまり強くないパイロットだったためか、精神的疲労が多かったようにも思います。 英語力の基礎がしっかりしていないと、その上に知識を上乗せしていくのは至極の業です。 訓練の初期段階では特の英語力の乏しさが目立ち、訓練の進歩に支障が出ました。 今までの訓練では僕のトレーニングパートナーはいつも優秀なパイロットで、言葉も問題はなく、良いペースで訓練が進んでいきました。 しかし今回は、僕がパートナーの間違いなどを補いながら訓練を続けていたので精神的にも余計に疲労しました。 

 以上、いろいろ大変ではありましたが、総合的には楽しい訓練で、いろいろ学ばせてもらいました。

 とりあえずの訓練は終わりましたが、ここからLine indocトレーニングが始まります。 これは実機を操縦して実際のオペレーションを学ぶ訓練です。 この訓練の後、最終チェックがあります。 これに合格して晴れて767の副操縦士となります。

 これから引っ越しの準備などもしないといけないので、いろいろとばたばたした日々が続きます。 そろそろ落ち着いてゆっくりしたいです・・・。


(つづく)

 

2017-03-23

シミュレーター訓練。

 


IPT訓練が無事に終了後、数日間休みがありました。 なので久しぶりにカルガリーの自宅に戻りました。 カルガリーに着くと気温はまだマイナス20度近く。 しばらくバンクーバーにいたせいもあってか今まで以上に寒く感じました。 そのおかげですっかりカルガリーが嫌いになりました(笑)。 できればバンクーバーで暮らしたいなぁという思いが一層強くなりました。 だけど、今のところはトロントベースですので、予定通りトロントに引っ越します。 近い将来、西海岸に戻ってこれたらいいんですけどね。

 バンクーバーに戻ってきてからはシミュレーターでの訓練を受けています。 シミュレーターの施設はIPT訓練の施設と同じ建物にあります。 この建物、実は以前Dash-8の訓練を受けたときにも利用していました。 あの頃は、今使っているボーイング767のシミュレーターの前を通り過ぎ、建物の一番奥のシミュレーター室にあるDash-8のシミュレーターで訓練を受けていました。 767のシミュレーターの前を通る度に「すげぇな〜」って思っていたものです。 そのシミュレーターで今僕は訓練を受けているということがなんとも信じられない時があります。 僕は本当に運が良いです。 

 シミュレーター訓練では毎回いろんなことを学びます。 多くのことはその日初めてやることで、そのおさらいとか、復習というようなことに重点的に時間を割くことは基本的にありません。 次から次へと新しいことをやらせれます。 幸い、休日にシミュレーターが空いているときには練習で使ってもよいことになっているので、時間がある度に自主練習をしています。 今日の写真は前回自主練習フライトをやったときに同じグループの同僚が撮ってくれた写真です。 

 練習では主にエンジンが停止してしまったときの手順や、片方のエンジンのみでのフライト、アプローチの練習をやります。 この767,大きくて重いせいもあってか、CRJよりも安定して飛行できます。 手動で操縦していても比較的飛ばすのは容易です。 CRJのほうが不安定で、いろいろ大変だったように思います。 手動でも落ち着いて飛ばせるのは気持ちが良いものです。 システム自体は今だに分からないことも所々ありますが、少しずつ学習していて、慣れてきているのが自分でもわかり、楽しいです。 

 シミュレーター訓練ももうまもなく終了です。 あと数回セッションがあった後、試験があります。 それが終わったらまた数回シミュレーター訓練があり、最終的にライセンス取得のための試験があります。 それが終わるとトロントに行って実地訓練が始まります。 1月23日から訓練を開始し、もうすでに2ヶ月が経とうとしています。 すべての訓練が終了するまであと1ヶ月ほどです。 そろそろ外食も飽きてきました(苦笑)。


(つづく)

2017-03-04

IPT訓練。

 今はバンクーバーでIPT訓練を受けています。 IPTとは「Instrument Procedure Trainer」の略で、「シミュレータのシミュレータ」です。 フルモーションシミュレータは稼働費用が高いので、訓練でいきなりシミュレータを使うことはあまりないようです。 まずはIPTで基本手順を覚え、それができるようになってから初めてフルモーションシミュレータでの訓練に入っていきます。 


 二人一組で、2組同時に訓練をしています。 僕と僕のトレーニングパートナーがIPT訓練をしているときには、もう一組の二人が後ろに座って我々の訓練を見学し、ノートを取ったりしています。 一組の訓練が終わると、次の組の番という感じです。 1セッション約2時間です。 訓練の前にはブリーフィングがあり、飛行機の重要なシステムの仕組みをおさらいしたり、緊急時の手順の説明を受けたりします。 

 僕の教官は二人いて、どちらも定年を迎えた元767機長です。 世界を飛び回っていたパイロットから聞ける話はとても面白いものばかりです。 とにかく話のスケールがでかい! 例え話のほとんどが、「チリに行ったときにはね〜」とか、「ロンドンへのアプローチのときにね〜」とかで、カナダ国内の話はほとんど出てきません(笑)。 こういう話を聞いていると、自分もいよいよワイドボディのパイロットになるんだなぁという実感が少しだけ湧いてきます。

 IPT訓練はあと数日で、その後でシミュレータ訓練が始まります。 毎日勉強ばっかりで大変ですが、週末にはトレーニング仲間と食事をしたり、お酒を飲んだりしてリフレッシュしています。 皆真面目に勉強しているので、良い刺激を受けています。


(つづく)

2017-02-15

勉強してます。


 最初の会社研修が終わってから早くも10日以上経ちました。 これまでずっと毎日勉強してきました。 壁に写真のようなコクピットのポスターを貼り、スイッチ類、計器類の場所を覚えたり、操作を覚えたりしています。 これまでセスナ機以外に3種類の機種を操縦していきました。 
  • キングエア200
  • ダッシュ8 100/300シリーズ
  • CRJ 200/900シリーズ
です。 さすがに3機種の操縦方法を覚えるプロセスを経験すると、なんとなくですが勉強の方法が身についてきます。 僕が最初にやるのはだいたい暗記系の勉強です。 例えば、リミテーション。 最大の離陸重量が何キロだとか、最高速度が何ノットだとか、そういう感じの項目の暗記です。 30代も後半で、まもなく40歳に差し掛かろうとしているのに今だに中高生のように暗記カードを作っています(笑)。 他にはフロー。 例えば、離陸前にチェックする項目をすべて暗記し、身体に覚え込ませていきます。 それからSOP(Standard Operating Procedures)や緊急時の手順などを少しずつ足していく感じで勉強しています。  暗記系の勉強を最初にやりたい理由は、ある程度数字や手順を暗記できるとなんとなくですが「勉強してる」っていう気になり、モチベーションが上がるからだと勝手に推測しています。 でも、流石に毎日これをやっていると疲れてきますし、飽きてきます。 なので、飽きてきたら他の項目を勉強したりします。 しかし、何事にも限界というものがあり、こんな勉強を毎日部屋に篭ってやっていてもやる気が続かないことがあります。 そんなときには勉強する場所を変えたりもします。 それでもだめなら潔くお休みを入れます。

 というわけで、今日は一日勉強をお休みしました。 天気がよかったので、外でうさぎに餌をやったり、お隣の猫と戯れたり、久しぶりにランニングにもいきました。 夜はゆっくり映画でも見てリフレッシュというつもりです。 何事もオン・オフが大事です。

 今回が僕にとって初めてのボーイング機になります。 まだ操縦していないのでなんとも言えませんが、勉強してきた内容から察するところ、「かなり良い飛行機」という印象を受けています。 世界2大航空機メーカーはアメリカ・ボーイングとフランス・エアバスです。 ここカナダではどちらも良く見かけます。 ヨーロッパに行くとエアバス機が圧倒的に多いように思います。 どちらが良いとか悪いとかは両方操縦してみないとわかりませんが、僕は正直なところボーイングで良かったと思っています。 ボーイング767は80年代のデザインで、初飛行から30年以上もの時間が経っています。 上のポスターの写真を見ていただければわかるとおり古い飛行機です。 最後に乗務したCRJはフルグラスコクピットで、計器類はすべてコンピューター画面に表示される形式でしたが、今回はアナログな計器類が多い印象を受けます。 しかし、システムのデザインやナビゲーション能力などは80年代の飛行機とはとても思えません。 さすがに海を越えて長距離を飛ぶ飛行機はデザイン哲学そのものが違っているように思います。 これでヨーロッパや日本に行くのが今のうちからとても楽しみです。 

 さて、また明日から勉強します。


(つづく)

2017-02-07

転職しました。

 久しぶりの投稿になります。 実は先月中旬をもって今までお世話になったリージョナル航空会社を退職しました。 2014年4月から3年弱働かせてもらいました。 この会社ではリージョナル路線を飛んでいました。 最初の1年半はダッシュ8(100シリーズと300シリーズ)というターボプロップ機に乗務しました。 その後、CRJ(200シリーズと900シリーズ)というジェット機を1年強飛ばしました。 どちらも操縦は楽しかったです。 

 ダッシュ8はどちらかといえばノロマな飛行機でした。 速度も音速の半分以下で、もっさりとした操縦感覚の飛行機でした。 しかし、飛行特性はとても安定していて、戦車のような頑丈さを誇る機体でした(笑)。 このダッシュ8では主にカナダの西海岸から中部を飛び回りました。 以前住んでいたビクトリアや、同じバンクーバー島のナナイモなどでのオーバーナイトは良い思い出です。 

 一方、CRJは小型ではあるもののジェット旅客機ですので速度は速く、音速の80%程度の速度で巡航できます。 動きも機敏で、とにかくハイパフォーマンス。 そのため、安全にフライトできるマージンがやや狭く、ダッシュ8に比べるといろいろと気を使うことが多かったです。 巡航速度が速くなる分、移動距離も圧倒的に長くなりました。 一番遠いところではカナダのカルガリーから約4時間ほどのフライトでアメリカ・テキサス州のヒューストンまで行きました。 他にもアメリカの都市に飛ぶことが多かったので、いろいろ学ぶことができました。 

 さて、今回移ることになった会社は、カナダの最大手のエアラインの一つです。 ここに到達できることをずっと目標に頑張ってきたのでとてもうれしいです。 この会社ではボーイング767型機の副操縦士からスタートとなります。 

 (上:ボーイング767型機 写真はイメージです ウィキペディアより)

 (上:ボーイング767の操縦室  ウィキペディアより)
本当は最新型機ボーイング787(ドリームライナー)がいいな〜なんて甘いことを考えていましたが、残念ながら僕には回ってきませんでした。 ボーイング767は古い機体ですが、いわゆる「ワイドボディ」の分類に入る機体です。 離陸重量はなんと約180トン。 今まで飛ばしていた飛行機の4倍以上の重さです。 乗客数も200名以上。 今まで飛ばしていた飛行機よりも3〜4倍多いお客さんを運ぶ計算になります。 就航路線もカナダ国内はもとより、海外に行くことが多くなるようです。 ヨーロッパ、中南米、そして日本! 成田便もあるので、これで永年の夢だった「自分の操縦する飛行機で日本に帰る」ことが叶うことになります。 これはうれしい! (もちろん、訓練に無事合格したら、という前提付きですが・・・)。 

 こう書くと良いことばかりのようですが、残念なこともあります。 一つ目はトロントに引っ越さなければいけなくなったこと。 僕は西海岸の雰囲気が好きで、できればバンクーバーベースに行きたいと思っていましたが、残念ながらトロントベースになりました。 そのため引っ越しを余儀なくされます。 まだ引っ越す時期は未定ですが、訓練終了後すぐに引っ越すと思います。 二つ目はセニオリティ。 前の会社ではいつのまにかかなりシニアなポジションになっていたので、スケジュールが希望通りになることが多かったです。 10日連休とかも簡単にスケジュールを調整すれば組むことができました。 今回の会社ではまたまたセニオリティリストの一番下に逆戻り(涙)。 そのため、しばらくはリザーブポジションになりますし、リクエストもほとんど通らないであろうと覚悟しています。 3つ目は就労日数。 恐らく前の会社よりも働くんじゃないかと思います。 でも、成田便などを担当できれば「成田で3泊」なんていうペアリングもあるみたいです。 大変なところもあるけど、楽しみなことのほうが今は多い感じです。  

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 1月後半から約2週間、会社研修を受けにトロントまで行って来ました。  今回のグランドスクールには30名のパイロットがいました。 今、航空業界はパイロット不足と就航路線拡大の波が来ていて、この会社も今年だけで300人近いパイロットを採用する予定だとか。 運良くこの波に乗れた感じです。 パイロットのほとんどはリージョナル会社から移籍してきた人でした。 研修が終わり、今は次の訓練が始まる前の勉強の期間でカルガリーに戻ってきています。 勉強は暗記することがものすごく多いですが、CRJを飛ばしていたおかげで767のシステムや操縦方法にもいろいろ共通点が多いことがわかりました。 少しずつ着実に用意をして訓練に挑むつもりです。 訓練は2ヶ月ほど、バンクーバーにある訓練施設で行われます。 またホテル暮らしが始まります(苦笑)。


 
(つづく)

2016-12-13

いきなり冬&サンフランシスコ。

 12月に入り、「今年は雪もまだ降ってないし、気温もそんなに下がらないし、どうなってるんだろうね〜」なんて話を頻繁にしていました。


 が!!


 冬はいきなりやってきました(笑)。 僕が日本から戻ってくると、普段はほとんど雪など降ることがないバンクーバー空港が雪化粧をしていてビビりました。 「あれ? もしかしてカルガリーにダイバートした?」って一瞬本気で思ったほどです。 


(上:僕が住んでいるところの側を流れる川も凍りました。)

(上:仕事でよく行くホワイトホースは−33度。 「極寒」ですって・・・苦笑。)

video
(上:散歩の途中で見かけたうさぎです。雪が降っても元気に走り回っています。)


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 先日、カルガリーからサンフランシスコまで行って来ました。 片道2時間ちょっとのフライトです。 サンフランシスコに行く時はいつもなにかが起こります。 過去数回のフライトでもそうでした。 他のパイロットと話をしていても、「今からサンフランシスコまで行くんだ」って言うと、「Good luck!!」って皮肉たっぷりに言われるような感じです(笑)。 なぜなら、サンフランシスコへのフライトはなんらかの理由でいつも遅延が発生し、オンタイムで飛べることはほとんどないからです。 

 そして今回も例外ではなく、出発前から3時間ほど地上待機を余儀なくされました。 どうやらサンフランシスコの天候が悪く、サンフランシスコへ飛んでくるトラフィックの量を制限しているとのこと。 「Ground Delay Program」と呼ばれるもので、テイクオフできる時刻が航空管制に制限されることを指します。 幸い、ゲートに向かう前にこの遅延についてディスパッチャーから連絡が来ていました。 なので、できた時間を利用して朝ごはんを食べたり、コーヒーを飲んだりしてまったり過ごしました。 

 霜が降りていたこともあり、出発前にはde-icingスプレーをし、予定よりもだいぶ遅れて離陸しました。 フライト自体はスムーズで、特に問題もなく、簡単なフライトです。 今回はILSで着陸だったので、いつものようにクレイジーなビジュアルアプローチをする必要もありませんでした。 サンフランシスコ空港は忙しい空港の割には周波数がタワーもグラウンドも1つずつしかありません。 そのため、無線はノンストップで誰かが話しています。 誰かの会話が終わった瞬間に発信をしても、他にも同じタイミングで発信している人がほぼ毎回いて、お互いをブロックしちゃうことも多々あります。 しかも、前回行ったときには誰かがstuck microphone状態(無線の発信ボタンが押し込まれた状態でひっかかってしまい、ず〜っと発信している状態になってしまうこと。 こうなると他の飛行機のパイロットが無線で喋ろうとしてもつながりません)になっていて、えらい目にあいました。 今回はそういったトラブルもなく、スムーズなフライトでした。

 (上:お隣のゲートにはユナイテッドの747が停まっていました)

  サンフランシスコは雨。 海から張り出した雲が空港を覆っていて、雲底は低かったです。 この空港はユナイテッド航空のハブ空港の一つのようで、そこらじゅうにユナイテッドの機体が停まっています。 特に747が現役でいまでも飛んでいて、見ているとなかなか楽しいです。 他にもアジア系の航空会社のエアバス330/340やら、日本航空の787、その他のワイドボディー機がたくさんいます。 そんな中を我々は小さなCRJ900で運航しています(笑)。 一旦空に上がってしまえば巡航高度もスピードもワイドボディー機とはそんなに変わらないんですけどね。 

 サンフランシスコやヒューストンなどはこの時期でも気温が比較的高く、パイロットには飛びやすい環境です。 というのも、気温が0度以下になると「cold temperature correction」という作業が必要になります。 これは、気温が0度を下回ると気圧高度計が正しい海抜高度を表示できなくなるので、正しい高度を表示させるためにはその誤差を計算し、そのご差分を表示されている高度に足す、という作業をしなければいけません。 簡単な暗算ですが、毎回のフライトでやるとなるとちょっと面倒です。 そういうことをしなくてすむ温暖な場所へのフライトはこの時期大歓迎です(笑)。



(つづく)